すゞろなる記

すずろ【漫ろ】〈形動ナリ〉たいしたものではない。たわいもない。

「サムネイル」について

「サムネイル」は、

画像ファイルの内容を一目で確認できるよう、アイコン代わりに利用できる大きさに縮小して表示したもの。また、YouTubeなどの動画共有サービスにおいて、動画を紹介する静止画

を指す言葉として用いられている。

 英語のthumbnail(親指の爪)を借用しており、thumbnailの意味を紐解いてみると

a small copy of a larger picture on a computer, shown in this way to allow more to be seen on the screen:

(コンピュータ上の大きな画像の小さなコピーで、このように表示することで、画面上でより多くの画像を見ることができる)

ーCambridge Dictionaryから引用

 となっている。

そうか、親指って英語でthumbって言うんでしたっけねと、thumbの意味を調べてみると

the short, thick finger on the side of your hand that makes it possible to hold and pick things up easily

(手の側面にある短くて太い手指で、物を持ったりつまんだりするのに便利である)

と記してある。

そこで、そもそも指と言えばfingerだったと思い当たり、今度はfingerを調べてみる

any of the long, thin, separate parts of the hand, especially those that are not thumbs:

(手の細長い分離した部分、特に親指ではない部分)

とある。thumbはfingerなんだか、fingerではないのか心細くなってくる。

親指以外の、人差し指、中指、薬指、小指の英語名を調べてみると

forefinger / index finger

the finger next to the thumb(親指の隣の手指)

middle finger
the longest finger on the hand:(最も長い手指)

ring finger
the finger nearest to your little finger. In some cultures, people wear a ring on their ring finger to show that they are married or are planning to get married.
 (小指に最も近い手指。一部の文化では、既婚または結婚を予定していることを示すために、指輪をはめる)

little finger
the smallest finger on each hand(最も小さい手指)

 中指よりも薬指の方が長い人もいるから、"the longest finger on the hand"では定義が甘いように思える。

ところで、以上のthumbやfingerの定義には必ず、handという言葉が出てくる。

つまり、thumbやfingerはhandの一部であって、日本語の「足の指」を示す言葉ではない。

「足の指」を示す言葉はtoeである。toeと言う言葉は「つま先」を連想するが、

toe
any of the five separate parts at the end of the foot:

(足の先端にある5つの独立した部分のいずれか)

となっている。それぞれの指の英語名を調べてみると、

big toe、index toe、middle toe、forth toe、little toe

となっている。

 

学生時代に英語教師から聞いた悪い冗談を思い出す。

それは、とある日本人が英語ネイティブの知人から「fingerは何本あるか」と問いかけを受け、「(両手足の指を足して)20本」と答えると、取り巻きが嘲笑するというものである。

作り話かも知れないが、このような行き違いは、そもそもお互いの文化圏が異なるから、言葉の一対一対応は出来るはずもなく、いちいち咀嚼して理解していく他ないのだろう。

 

 

さて、IT用語の「サムネイル」に話を戻して、これの中国語を調べてみると、

「缩略图」、「縮略圖」あるいは、「封面縮圖」が出てくる。

日本で用いる漢字に当てはめると「縮略図」となる。

「サムネイル」の意味としてはぴったりで、さすが、漢字の国である。

 

明治維新の頃であれば外来語の意味を吟味して、新たな言葉を造ったことだろう。

昨今は技術用語を中心に、特に英語圏からの流入が激しく、安易にカタカナ語にしてしまうことが多いが、一度原典を紐解いたり、あるいは漢字文化圏での取り入れ方を参考にしてみても良いのかも知れない。

 

そう言えば、「五輪」と言う造語は、とてもよくできている。

視覚的に「五輪の輪」を彷彿とさせるし、発音もOlympicという響きに通じるものがある。

自然発生的にできた言葉なのか、誰か仕掛けた人がいるのかは、良く分からない。